TOYO's Review レビュー
レビューコラム一覧へVOL.1 アナモフィックレンズとは?
普通のレンズと何が違う?
アナモフィックレンズの特徴
映画、ミュージッククリップなどでたまに目にする、上下に黒い帯のついた横長の映像。
その横長の映像を撮影するために開発された特殊なレンズのことを「アナモフィックレンズ」と呼びますが、
普通のレンズとは一体何が違うのでしょうか?
アナモフィックレンズの利点
アナモフィックレンズは、4:3モード等で撮影できるカメラセンサーの枠の中に、横幅の広いワイドな映像を押しつぶした状態で記録する、という特殊なしくみのレンズです。押しつぶされた分は、編集時に「デスクイーズ(De-Squeeze)」という処理をして補正をします。
映像をどれだけ横長にするか?にもいろいろな比率がありますが、最も有名な規格としてあるのが 2.39:1比率の「シネマスコープ(Cinemascope)」というものです。
あとで画角のトリミングもでき、普通に16:9で撮影した映像に、編集で上下に黒い帯を付ければよいのでは?という考え方もありますが、あえてこの特殊なレンズを使う理由は何なのでしょうか?
アナモフィックレンズではなく普通のレンズで撮影した素材から、シネマスコープの画像を得ようとすると、映像の上下を切り取る必要があり、画素の多くを不使用領域として切り捨ててしまいます。アナモフィックレンズを使用することで、この不使用領域を無駄にすることなく、デジタルカメラのセンサー領域を有効活用しながら、シネマスコープ映像を創り出すことができるのです。
ここでは、アナモフィックレンズの話をする際には、普通のレンズのことを「球面レンズ(Spherical Lens)」と呼んで区別をします。この記事でも以降、アナモフィック以外のレンズ=球面レンズとして解説をしていきます。
光線状のフレアが発生する
アナモフィックレンズを使用することで、副産物として特徴的な表現が画面上に現れます。最も有名なのが「水平フレア(Streak Flare)」です。これはライトなど光源を映すと、映像に光線状のフレアが発生するというもので、劇映画やミュージッククリップなどで特殊効果としてよく使われる表現です。フレアの出方は、アナモフィックレンズの種類によって大きく変わり、レンズ選択の基準にもなります。
この効果はアナモフィックレンズ特有のものですが、球面レンズに「ストリーク(Streak)」というレンズフィルターを使うと、同じ効果を得ることができます。
背景のボケが楕円形になる
アナモフィックレンズの特徴として「楕円形のボケ(Oval Bokeh)」というものもあります。球面レンズは背景のボケが絞り羽根のかたちに丸くなるものがほとんどですが、アナモフィックの場合はそれが楕円形になります。下の写真の背景にある電飾に注目すると、アナモフィックの方が楕円形になっていることが分かると思います。
この楕円形のボケは、ボケ始めから終わりまで画面全体に影響しており、ピントの合っている範囲を除いた画面全体に発生するもので、球面レンズと比べて「歪んだ」映像を生み出します。この歪みが多くの人を魅了しているのだと思います。イメージとしては、Heliosなどオールドレンズの「ぐるぐるボケ」と似たような効果とも言えます。
ウクライナのレンズメーカーIronGlassは、ビンテージレンズを改造して、球面レンズに楕円形のボケとフレア効果を持たせたモデルを開発していたりもします。
レンズの焦点距離が変わる?
またあまり語られることのない部分ですが、レンズの焦点距離「ミリ数」に関しても違いがあります。原則として、同じミリ数のレンズを付けると画角は常に同じになるはずですが、アナモフィックの場合はその基準が球面レンズと異なります。たとえば、カメラの位置は変えずに、同じ50mmのレンズを付けて比べてみると、画角はこのようになります。
レンズは両方とも同じ50mmですが、結果としては、アナモフィックの方がよりワイド(広角)になることが分かると思います。
何ミリのレンズを選べばいいのか?アナモフィックレンズを初めて使用する場合は、このあたりの違いを踏まえてレンズ選びをするのがよさそうです。
まとめ
イメージセンサー(画像)を有効活用するという側面もありますが、近年、アナモフィックレンズが世界中で使われる理由としては、オールドレンズさながらのボケ感であったり、水平フレアなど、映像によりリッチな味わいを持たせる意図で使われるケースがほとんどです。
次回(Part2)の記事では、人気の個人向けアナモフィックレンズ4本の基本性能、質感しを比較したテスト動画を紹介していきます。
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