TOYO's Review レビュー
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VOL.3 話題のLEDライトの性能は?
Part2

LEDライトの
光の“質感”を比較する

Aputure LS 600d Pro ARRI Orbiter

ソフトボックス、フレネルレンズ、リフレクターにより光の質感はどう変わるのか?話題のLEDライト「Aputure LS 600d Pro」、「Aputure LS 300X」、「ARRI Orbiter」の機能を拡張する8種類のモディファイヤーの性能を比較してみました。


はじめに

Part2では、スタジオでの人物撮影の場面を想定した「ファッション・ポートレート」の設定で、ライト前に取り付けて光の質感を変える、8種類のモディファイヤーの性能(光の質感)を比較していきます。


カメラまわりの機材と設定

カメラはRED Komodo 6K、レンズはフレア感のあるクラシックな描写に定評のあるTokina Vista One、光量調整のためのNDフィルターはMITOMO TRUE NDを使用しているので、色に関してもかぎりなくニュートラルな状態でテストを行っています。

RED KOMODO 6K

Tokina Vista One

カメラ設定
6K 16:9(5760×3240)/ REDCODE RAW MQ / 40fps / 172.8° / ISO:800 / WB:5600K



ライティング設計

今回のテストでは、「Aputure LS 600d Pro」「Aputure LS 300X」「ARRI Orbiter」の3種類のライトに 「ソフトボックス」「リフレクター」「フレネルレンズ」など、計8種類のモディファイヤーを付け替えて、その光の質感を比較しました。

設定は、太陽光の影響のない撮影スタジオを想定した空間で、ライトはカメラ横の同じ位置より。壁際にいる人物に向けて1灯のみ当てています。壁に落ちる影のニュアンスを含め、モディファイヤーごとの特性を確認していきます。

ライトの配置図は、以下の通りです。

光量は露出計(入射光)、色温度に関してはスペクトロメーターで各ライトの数値を計測し、常に同じ条件になるようライト側の設定を調整しています。

それでは、各モディファイヤーの説明と合わせて、その光の質感を比較していきしょう。


ソフトボックス|
光の質感

まず、ポートレート撮影では定番の「ソフトボックス」を装着した状態で、光の質感を見ていきます。映像は、肌色を基準にホワイトバランスを調整して、DaVinci ResolveのMidtone Detailの効果で、すこし肌の質感をなめらかにしたものです。

①Aputure LS 600d Pro + Light Dome II
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.0(ND0.3)
キーライト F2.8
暗部 F1.4
コントラスト比 4:1
ライト出力 25.1%
色温度の設定 5,600K
実際の色温度 5,328K / Duv -0.0013

Aputure純正モデル「Light Dome II」は、内側が銀色の素材に覆われた、Bowensマウントの丸型のソフトボックスです。直径は約90cm。前面に取り付けるディフューザーと合わせて、ソフトボックスの内側に装着する「ビューティ・ディッシュ(Beuty Dish)」を使用することで、ギラつきのないやわらかな質感の光を作り出すことができます。

光の質感としては、ハイライトから暗部までのグラデーションがなめらかで、影も非常にソフトになります。また瞳に映りこむ「キャッチライト」も美しいため、丸型のソフトボックスはビューティ系の撮影でよく使われています。

②ARRI Orbiter + DoPchoice Octa4
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.5(ND 0.3)
キーライト F2.8.7
暗部 F2.0
コントラスト比 3:1
ライト出力 94.1%
色温度の設定 5,950K
実際の色温度 5,603K / Duv -0.0054

撮影時にOrbiterには純正のソフトボックスが調達できなかったため、ARRI公認のサードパーティ製品を使用することにしました。今回のテスト撮影では、DoPchoice「Octa 4 for Orbiter」を使用しています。

Octa 4は内側が銀色の素材に覆われた、QLMマウント対応の八角形のソフトボックスです。直径は約120cm。今回使用した Magic Clothのタイプは、ビューティ・ディッシュの代わりに、ディフューザーの中央に黒い円が貼り付けられており、一般的なソフトボックスと比較すると、光がよりマットな質感になります。


リフレクター|
光の質感

続いてARRI Orbiter、Aputure Light Stormシリーズの標準装備となる「リフレクター」を付けた状態で、各ライトの光の質感を見ていきます。

③Aputure LS 600d Pro + 55° Hyper Reflector
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.8(ND 0.6)
キーライト F4.0
暗部 F1.4.3
コントラスト比 6:1
ライト出力 2.6%
色温度の設定 5,600K
実際の色温度 5,641K / Duv -0.0019

LS 600d Pro付属の純正モデル「55°Hyper Reflector」は、内側にシルバーの凹凸のある照射角55°のリフレクターです。光を集光することで、光量を約4倍上げる効果があります。

光の質感をソフトボックスと比べてみると、よりハイライトの芯が強くなり、ツヤ感が増し、影がより濃く出ていることがわかります。よく言えば、光の立体感が増す。悪く言えば、テカリが強くなり生っぽさが増すとも言えます。

④ARRI Orbiter + Open Face Optics 60°
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.8(ND 0.3)
キーライト F4.0
暗部 F1.4.8
コントラスト比 5:1
ライト出力 40%
色温度の設定 7,250K
実際の色温度 5,597K / Duv -0.0043

ARRI純正のモディファイヤー「Open Face Optics」は、内側にシルバーの凹凸のあるQLMマウントのリフレクターです。3種類(15°/30°/60°)の集光率の異なるモデルがあります。

Open Face Optics 60°の光の質感は、適度なツヤ感がありながら、肌のあらが目立たない程度にやわらかな感じになっています。照射角 60°は、一般的なフレネルレンズ型のHMIライトを最もバラした状態と同じ数値になります。

⑤ARRI Orbiter + Open Face Optics 30°
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.8(ND 0.3)
キーライト F4.0
暗部 F1.4.3
コントラスト比 6:1
ライト出力 27.4%
色温度の設定 8,500K
実際の色温度 5,601K / Duv -0.0047

Open Face Optics 30°の光の質感は、Open Face Optics 60°とあまり印象は変わりませんが、影がより濃くなり、光のコントラストがやや高くなっています。

⑥ARRI Orbiter + Open Face Optics 15°
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.8(ND 0.3)
キーライト F4.0
暗部 F1.0.4
コントラスト比 12:1
ライト出力 20%
色温度の設定 9,950K
実際の色温度 5,598K / Duv -0.0020

Open Face Optics 15°は、コントラストが高く、スポットライト感のある光という印象です。肌のなめらかさは損なわれ、肌の粗が目立ちはじめ、ポートレートとしては力強い表現となっています。照射角 15°は、Aputure LS 600d Pro用のフレネルレンズ「Fresnel 10X」を最もスポット光にした状態と同じ数値になります。


フレネルレンズ|
光の質感

続いては、光の集光率を調整できる「フレネルレンズ」を装着した状態で、光の質感を比較していきます。Orbiterはフレネルレンズがないため、比較対象はLS 600d Pro用の「Fresnel 10X」と、Aputure Light Stormシリーズ汎用の「Fresnel 2X」の2種類になります。

⑦Aputure LS 600d Pro + Fresnel 10X / Flood 45°
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.8(ND 0.6)
キーライト F4.0
暗部 F1.4.3
コントラスト比 6:1
ライト出力 0.1%
色温度の設定 5,600K
実際の色温度 5,468K / Duv -0.0012

Aputure LS 600d Pro用のフレネルレンズ「Fresnel 10X」は、集光率を上げることで、最大で光量を約11倍高める効果があります。今回のテストでは、光を最もバラした状態(Flood)にしています。

コントラスト比は 55°Hyper Reflectorと同じ数値ですが、フレネルレンズの方が、暗部がすこしくっきり濃く出ていることが分かります。このあたりの質感の差は、照射角の差によるものと推測されます。

⑧Aputure LS 300X + Fresnel 2X / Flood 40°
レンズ Tokina Vista One 105mm F2.8(ND 0.6)
キーライト F4.0
暗部 F1.4.4
コントラスト比 6:1
ライト出力 28%
色温度の設定 5,800K
実際の色温度 5,569K / Duv -0.0045

参考に、Aputure LS 300Xに、Aputure Light Stormシリーズ汎用のフレネルレンズ「Fresnel 2X」を装着しました。「Fresnel 2X」は、集光率を上げることで、最大で光量を約7倍高める効果があります。前述のLS 600d Proと同じく、こちらも光を最もバラした状態(Flood)にしています。

今回のテストでは ⑦LS 600d Pro + Fresnel 10Xと同じ光量で比較していますが、光の質感はほぼ同じ印象になっています。


演色評価指数まとめ

光の色をどれだけ忠実に再現できるか?その指標となる「演色評価指数」に関しては、テスト撮影とは別にスペクトロメーターで計測したものがあるので、そのデータを紹介したいと思います。計測値に関しては、ライト側の設定をテスト撮影時と同じ状態にして計測したものになります。

下記よりそれぞれのデータ(ZIP形式)をダウンロードしてご覧ください。

Aputure LS 600d Pro + Light Dome II ダウンロード
ARRI Orbiter + DoPchoise OCTA4 ダウンロード
Aputure LS 600d Pro + 55°Hyper Reflector ダウンロード
ARRI Orbiter + Open Face Optics 60° ダウンロード
ARRI Orbiter + Open Face Optics 30° ダウンロード
ARRI Orbiter + Open Face Optics 15° ダウンロード
Aputure LS 600d Pro + Fresnel 10X / Flood 45° ダウンロード
Aputure LS 300X + Fresnel 2X / Flood 40° ダウンロード

まとめ

単純にモディファイヤーの種類の比較では、OrbiterよりAputure Light Stormシリーズの方が豊富なラインナップがあります。マウントに関しても、Orbiterが採用するQLMマウントは2021年時点ではまだあまり普及していないので、すでにサードパーティ製品が豊富にあるBowensマウントを採用するAputure Light Stormシリーズは、その点では有利と言えそうです。

ARRI製品に関しては、フレネルレンズ付きの別ライン「L-Series」もあるので、さまざまなモデルを組み合わせることで、光のバリエーションを広げる方向性になりそうです。

そして、今回のテストで気になった点としては、光の“色”に対する問題もあります。データを見ると一目瞭然ですが、ARRI OrbiterはOpen Face Opticsを装着すると、色温度が大きくシフトしてしまいます。要はライトで設定した色温度の数値と、スペクトロメーターで計測した実際の色温度がかけ離れてしまう、という問題です。

色温度5,600Kの基準で見ると、その差はOpen Face Optics 60°で約1,650K、Open Face Optics 30°で約2,900K、Open Face Optics 15°では約4,350Kもの差があります。さらにOpen Face Optics 15°に関しては、ライトの芯より外側のエリアがG(緑色)方向にシフトするという傾向も見られます。

Orbiterはライト側で、色温度とは別にグリーンマゼンタシフト(色差)の調整もできるので、そのあたりの機能で補正できそうな感じもありますが、いずれにせよスペクトロメーターなしで正しい色を再現するのは難しそうです。

一方、今回テストで使用したAputure製品に関しては、どのモディファイヤーを装着しても色温度のシフトは300K以下だったので、その問題はなさそうです。しかし、ライトの個体差や経年劣化により、もし色がシフトしてしまった場合には、色差を補正する機構がないので、そのあたりはAputure Light Stormが抱える大きな課題と言えそうです。


TOYO RENTALでは、話題のAputure LS 600d Pro、LS300d IIと
豊富なオプションがレンタル可能です。

Aputure Light Storm LS 600D Pro
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Aputure Light Storm LS 300X
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