TOYO's Review レビュー
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VOL.5 光を制御する技術:フィルターの役割と利点
Part1

評判のNDフィルター
Breakthrough Filters
試してみた。

RED KOMODO 6Kに最適なNDとして、最高品質のMitomo TRUE NDをはじめ、Canon Variable ND A、Tilta Mirage VNDとの比較を通して、ドロップイン型の可変NDとして高い評価を得ている、Breakthrough Filters X4 VNDの性能を検証していきます。


Mitomo 4×5.65″
TRUE ND

まずはじめに、日本のデジタルシネマ業界で最高品質のNDフィルターとして知られている、Mitomo TRUE NDの品質を見ていきたいと思います。

TRUE NDは、マットボックスに入れて使用する角型のレンズフィルターで、750nmまでの波長の光をフラットに落とす特性があります。サイズに関しては、4×5.65、6.6×6.6の2種類がありますが、今回は定番の4×5.65サイズで検証をしています。

今回のテスト撮影では、カラーチャートの裏に布製の黒フラッグを立て、赤外線の影響で黒が赤紫色にシフトしてしまう、赤外線汚染の現象が起こるかの確認もしていますが、TRUE NDに関しては、赤外線の影響は全くないようです。

以下の画像は、ホワイトバランスを調整する前のイメージですが、フィルターを2枚重ねがけしたり、NDの濃度を濃くしても、赤外線汚染はおろかカラーシフトもほとんど発生していないことが分かります。

Mitomo TRUE ND 1.2+0.9 RED KOMODO 6K - ISO:800 F2.8

またNDの濃度ごとに比較をしてみると、今回のテストで使用した中では、ND 0.6がややG方向(緑)にシフトしているようですが、全体的にカラーシフトはほとんどなく、色再現のクオリティが非常に高いことが分かります。


Canon Drop-in
Variable ND A

続いて、マウント変換アダプターCanon Drop-in Filter Mount Adapter EF to EOS Rに差し込んで使用ができる、Canon の可変ND Aを試してみます。

Canon Drop-in Filter Mount Adapter EF to EOS Rは、RFマウントを採用するCanon製のカメラ用に開発された、フィルター内蔵のマウント変換アダプターで、ドロップイン型の小型のレンズフィルターを装着できるという、機能性の高さに特徴があります。

今回のテストでは、そのマウント変換アダプター用に開発されたCanon 純正の可変NDである、Variable ND Aの品質を検証します。ND濃度の調整幅は、1.5〜9STOPとなります。

このドロップイン型の可変NDは、RED Digital Cinema公式サイトでも紹介されており、RFマウントを採用するV-RAPTOR、KOMODOなど、RED DSMC3シリーズのカメラでも使用ができますが、赤外線汚染が発生すると言われており、YouTube上でもその事例が公開されています。

実際にRED KOMODO 6Kで試してみると、赤外線汚染よりもまず気になったのが、強烈なカラーシフトです。可変NDのダイアルを回して NDの濃度を濃くしていくと、色がだんだんB方向(青)にシフトしていき、濃度がMax付近になると、イメージ全体が青くなりました。

Canon Drop-in Variable ND A - Max RED KOMODO 6K - ISO:800 F1.2

試しに、DaVinci Resolveでホワイトバランスを補正して、青の成分を取り除いてみると、イメージは以下のようになります。

Canon Drop-in Variable ND A - Max RED KOMODO 6K - ISO:800 F1.2

光量の都合で、レンズは開放 f1.2で撮影しているので、輪郭部分に紫色のフリンジが目立っていますが、そうした要素とは別に、チャートの裏側にある黒フラッグの布地が、やや赤く転んでいることが分かります。

カラーシフトの具合を段階的に見てみると、NDの濃度が濃くなるにつれて、イメージ全体がB方向(青)に転んでいく様子が確認できます。可変NDの回転が、全体の3/4を超えると、その具合がより強烈になる印象です。

NDの濃度が変わるたびに、こまかくホワイトバランスを補正していけば、色を標準化することはできますが、濃度がMax付近になると、B方向(青)の色がなくなり、青紫色がピンク色に転んでしまっています。以下の画像は、NDの濃度ごとに、ホワイトバランスを適正化したものです。


Breakthrough Filters
X4 VND

続いて、Breakthrough Filtersが開発するドロップイン型の可変NDである、X4 VNDを試してみます。

Breakthrough Filtersが開発するX4 VNDは、前述のCanonのマウント変換アダプターDrop-in Filter Mount Adapter EF to EOS Rに装着して使える、ドロップイン型の可変NDフィルターです。ND濃度の調整幅は、1〜11STOPです。

このX4 VNDは、RED界隈のインフルエンサーである撮影監督のPhil Holand氏も高く評価しており、RED V-RAPTOR、KOMODOでも問題なく使える製品として知られています。使用感としては、濃度を調節するダイアルの硬さも程よく、前述のCanon製品よりもこまやかな調整ができる印象です。

実際にRED KOMODO 6Kに装着してみると、フィルター自体の色のにごりはあるようで、イメージ全体がYG方向(黄緑色)にシフトしました。

Breakthrough Filters X4 VND - Max RED KOMODO 6K - ISO:800 F1.2

DaVinci Resolveでホワイトバランスを補正して、フィルターのにごりを取り除いた上で、あらためて確認をしてみると、赤外線汚染による赤みは発生していないようです。

Breakthrough Filters X4 VND - Max RED KOMODO 6K - ISO:800 F1.2

続いて、カラーシフトの具合を段階的に見てみると、ND の濃度を変えても色の再現性は安定しており、前述の Canon 製品のように、途中でカラーシフトの具合が変化するようなことはないようです。

DaVinci Resolveでホワイトバランスを補正してみると、イメージは以下のようになります。X4 VNDの場合は、カラーシフトの具合が一定なので、一度ホワイトバランスを適正化すれば、NDの濃度が変わるたびに色を補正する必要もなく、カラーグレーディングなど後処理がしやすい印象です。


Tilta Mirage
Matte Box VND

続いて、Tilta Mirageマットボックスシステムの可変NDを試してみたいと思います。

Tilta Mirage Matte Boxは、4×5.65など一般的な角型のガラスフィルターではなく、専用のフィルタートレイに装着する95mmの円型のフィルターを使用したマットボックスシステムですが、今回のテストでは、このMirage用に設計されたTilta純正の可変NDを検証していきます。ND濃度の調整幅は、1〜9STOPです。

このMirageには、フィルタートレイが1個しかないので、ねじ込み式の円型フィルターを使用するのとあまり変わらない印象もありますが、レンズ交換をする際に、ねじ込み式のフィルターを付け外す手間が省けるという点では、撮影を効率化できる便利な製品といえます。

実際にRED KOMODO 6Kに装着してみると、X4 VNDと同じように、フィルター自体のにごりがあるようで、YG方向(黄緑色)へのカラーシフトが見られました。

Tilta Mirage VND - Max RED KOMODO 6K - ISO:800 F1.2

DaVinci Resolveでホワイトバランスを適正化して、フィルターのにごりを取り除いてみると、イメージは以下のようになります。X4 VNDと同じく、赤外線汚染による黒のカラーシフトはないようです。

Tilta Mirage VND - Max RED KOMODO 6K - ISO:800 F1.2

カラーシフトの具合を段階的に見てみると、NDの濃度を変えても色再現は安定しており、こちらもX4 VNDと同じく、途中でカラーシフトの具合が変化するようなことはないようです。

DaVinci Resolveでホワイトバランスを補正すると、イメージは以下のようになります。


まとめ:Side by Sideで品質を比べてみる

最後に、Mitomo TRUE ND、Breakthrough Filters X4 VND、Canon Drop-in VND、Tilta Mirage VNDの4製品の品質をSide by Sideで比較してみたいと思います。

Mitomo TRUE ND、Breakthrough Filters X4 VND、Canon Drop-in VND、Tilta Mirage VNDの4製品のイメージを並べてみると、以下のようになります。

比較してみると、まず TRUE ND に関しては、左端のフィルターなしの状態と比べても、カラーシフトが全くないことがわかります。一方、可変 ND に関しては、いずれの製品もカラーシフトは発生するようで、Breakthrough Filters、Tilta 製品は YG 方向(黄緑色)に、Canon 製品は B 方向(青)に色が転んでいます。いずれもホワイトバランスは未補正で、可変 ND の濃度は 3/4 回転(ND2.1相当)ほどの状態です。

続いて、ホワイトバランスを補正した状態で比較をしてみます。ホワイトバランスは、可変 ND の効果が最も弱い状態に対して、最適なバランスになるよう調整しています。

Breakthrough Filters、Tilta製品に関しては、色の再現性がTRUE NDよりは劣るものの、NDの濃度を変えても色転びが起こらないので、フィルター自体のにごりを取り除けば、問題なく使える印象です。一方、Canon製品に関しては、NDの濃度を変えるたびに色が変わるので、カラーグレーディングなど後処理の作業がかなり面倒になりそうです。

NDフィルターを撮影時に使用するメリットとして、RAW撮影では露出の調整範囲が広いですが、特に明るい環境ではセンサーが飽和することがあります。NDフィルターを使用すると、シャッタースピードや絞りを変更せずに適切な露出を維持できます。これは、モーションブラーを適切にコントロールするために特に重要です。

また、画質保持の観点からも、NDフィルターを使用することで、ダイナミックレンジを保ちながら、ハイライトのディテールを失わずに撮影できます。後処理で露出を下げるよりも、撮影時に正確な露出を得る方が、画質が高く保たれます。

このことを踏まえ適切なフィルターを使用することが重要になるでしょう。


TOYO RENTALでは、話題のBreakthrough Filters X4 VNDをはじめ、
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